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2017/01/03

メディア・リテラシー教育の中核原理

Tweet ThisSend to Facebook | by sakamoto
メディアリテラシー教育の中核原理

メディアリテラシー教育の目的は、すべての年齢層の個人に対して、現代世界の中で批判的に考え、効果的にコミュニケーションを行う活動的な市民として生きるために必要な探究の習慣と表現のスキルの発達を保障することである。

イントロダクション

AMLAにとって、多くの教師やこの教育を支持してくれる人々にメディアリテラシー教育の中核原理を提供することができることは、大変喜ばしいことである。多くの研究者たちが、メディアリテラシーの分野だけではなくコミュニケーションや映画研究、公衆衛生、心理学などの分野の研究費を受けながら苦心してこの原則を書き上げることに関わってきた。 

「メディアリテラシー」という言葉は、初めて使われてから数十年を経て大きく変化してきたが、われわれはこの豊かな知的遺産をもたらしてくれた人々に敬意を表したい。この変化に対する答えとして、この文書はメディアについて私たちが真実であると信じるものについての議論から、いかにして人々が批判的に考えることを学ぶのかという問題についての議論へと焦点を移したい。そのことによって、何を教えているかということだけではなく、どのように教えているかということも含むように、概念の領域を拡大させる。そしてそれゆえに、単なる「メディアリテラシー」のキーコンセプトよりもむしろ「メディアリテラシー教育」の中核原理としてこれらを区別するのである。 

私たちはこれらの中核原理はメディアリテラシー教育を担う教職員たちとこの教育の賛同者たちが一体となりうる共通基盤をはっきりと提示していると考えている。AMLAは、前向きで力強い対話のための一つの出発点として、そして明確で判定可能な成果や基準を発展させるための第一歩として、中核原理を用いることを約束する。私たちは、皆さんに、全国メディア教育会議などの会議や「www.AMLAinfo.org」へ参加するように積極的に呼びかけたい。 

1. メディアリテラシー教育は、私たちが受信し、創造するメッセージについての積極的な探究と批判的思考を要求する。

したがって、

・メディアリテラシー教育は、批判的思考の重要性を強調する。すなわち、私たちが賛成できないメッセージに対してだけではなく、あらゆるメディアのメッセージに対して疑問を投げかける。

・メディアリテラシー教育は、生徒たちが紙ベースの十分検証された資料を用いて結論を導き出せるように訓練する。

・メディアリテラシー教育は、教職員が日常的に批判的思考を育て、教育の行政や学校はすべての教室で批判的思考を支援することを求める。

・メディアリテラシー教育は、効率的なメディア分析の基礎とは次の点を認識することであると考える。

(1) すべてのメディア・メッセージは、「構成されたもの」である。 
(2) それぞれのメディアは、異なる特徴、影響力、および独自の構成「言語」を持つ。 
(3) メディア・メッセージは、特定の目的のために作り出される。 
(4) すべてのメディア・メッセージは、埋め込まれた価値や視点を含んでいる。 
(5) 人々は、個人のスキルや信条、経験を用いて、メディア・メッセージから自分自身の意味を構成する。
(6) メディアとメディア・メッセージは、信念、態度、価値、行動と民主主義プロセスに影響を与えることができる。

・メディアリテラシー教育を担う教職員は、生徒たちに、メディア・メッセージからより深くより洗練された理解を得るためにはどんな疑問を持てばよいのか教える。

したがって、

・メディアリテラシー教育は、生徒のものの見方を他の誰か(自分自身や教職員や評論家など)の見方に取って変えるものではない。

・メディアリテラシー教育は、生徒が自分たち自身のために批判的にメディアを分析できるスキルを共有しないままに、メディア批判をすることではない。 

・メディアリテラシー教育は、表現のスキルを教えないままに、批判的思考を教えることではない。

・メディアリテラシー教育は、また、批判的思考を教えないままに、メディアの制作に必要な技術的スキルを教えることでもない。

・メディアリテラシー教育は、批判的探究スキルを教える代わりにメディアリテラシーのビデオや映画、本、そのほかの教材を用いることではない。

・メディアリテラシー教育は、単に教室でメディアを用いることではない。 

・メディアリテラシー教育は、ある特定のメッセージにバイアスが存在するときだけに必要なのではない(それゆえすべてのメディア・メッセージにはバイアスが存在する)。むしろ存在するであろうバイアスにどんな内容があるのか、どんなソースがあるのか、意味は何かということを問う。 

・メディアリテラシー教育は、メディアだけでなく他のどんな話題に対しても、単純化しすぎたり、一般化しすぎることを容認しない。

・メディアリテラシー教育は、複雑な議論を二つの立場に制限したり矮小化することではない。 

2. メディアリテラシー教育は、リテラシーの概念(すなわち読み書き)をあらゆるメディアの形態に拡張する。

したがって、 

・メディアリテラシー教育は、伝統的な印刷物、視聴覚メディア、電子メディア、デジタルメディア、ユーザー志向型メディア、携帯メディアを含んでいる。

・メディアリテラシー教育は、他のリテラシーと交わる。すなわち、書物のリテラシーや視覚リテラシー、コンピュータ・テクノロジー・リテラシー、情報リテラシーなどの他のリテラシーと区別されるのではなく、多くの目標や技術を共有する。

・メディアリテラシー教育は、さまざまな環境の中で実施される。学校や放課後の課外プログラム、インターネット、大学、宗教的組織、家庭を含んでおり、それらに限られない。 

・メディアリテラシー教育は、保育園から中学校のカリキュラムを通して、これまで形式的なリテラシー教育が行われていなかった場だけではなく、伝統的に書物のリテラシー教育が行われているすべての場で実施されなければならない。 

・メディアリテラシー教育は、生徒が多様な形態のメディア創作を通じて自分たちの考えを表現し、コミュニケーションすることを可能にする。

・メディアリテラシー教育は、生徒が印刷物や視聴覚メディアの創作を通じて、理解と推論を結びつけることを援助する。

・メディアリテラシー教育は、人気のあるメディアを含む、広い領域のメディア「テキスト」の活用を歓迎する。

・メディアリテラシー教育は、絶えず新しい教育アプローチや実践を必要とするメディアの形態的進化や社会変化、社会制度を認識する。

・メディアリテラシー教育は、教室にメディアの分析と創造を両方とも行うことのできる設備を整えることを支援し、メディア技術に対するラッドダイト的な考え方やそれらを妨害する立場を拒否する。

したがって、 

・メディアリテラシー教育は、政治的な運動ではない。それは、一つの教育の体系と方法であり、アプローチである。 

・メディアリテラシー教育は、「メディア業界」の変化に焦点を合わせるのではない。むしろ教育実践と生徒の知識やスキルの向上に焦点を合わせる。

3. メディアリテラシー教育は、あらゆる年齢層の学習者に対して行われ、スキルの向上を図る。識字能力のように、それらのスキルは統合され、インタラクティブに繰り返し、練習される必要がある。

したがって、 

・メディアリテラシー教育は、一つのクラスで一日一回以上、あるいは少なくとも一週間にわたって行われる必要がある。

・メディアリテラシー教育は、教職員が生徒から学び、生徒が教職員やクラスメイトから学ぶような共同学習を奨励し、そこから多くのものを得る。

・メディアリテラシー教育は、健康的なライフスタイルと意思決定を励ますスキルを身につけさせる。 

・メディアリテラシー教育は、メディアの管理を教える。つまり、生徒がメディアを使う時間や自分たちが利用するメディアの選択について、生徒たちが十分に情報を持って判断することを学ぶことを手助けする。

・メディアリテラシー教育は、生徒に分析と表現のスキルを練習し、発達させるため、数多くの、そして多様な機会を与えられるように努力する。

・メディアリテラシー教育は、生徒たちに多様なスタイルの学習に取り組ませる。 

したがって、 

・メディアリテラシー教育は、想定できる、あるいは実際に有害なメディアの影響を人々に吹き込むことではない。

・メディアリテラシー教育は、メディアへのアクセスや内容について、他の人々にある種の決定をさせることではない。

・メディアリテラシー教育は、ある能力を「持っているか、持っていないか」ということではない。むしろ、一つの永続的なスキルや知識、態度と行動の進化の連続である。

4. メディアリテラシー教育は、民主主義社会に不可欠な、情報に通じ、深く考え、積極的に関わっていく社会への参加者を育てる。


したがって、 

・メディアリテラシー教育は、多様な見方を重んじる。 

・メディアリテラシー教育は、主体的に創造したメディアを重視する。 

・メディアリテラシー教育は、生徒が主権者としての立場からニュースや時事問題に関心を持つよう務める。

・メディアリテラシー教育は、世界的なコミュニティの中で、文化や国々について、さまざまな表現や誤解、不足している表現を探し求める。

・メディアリテラシー教育は、生徒に対して、表現の自由とそれに伴う責任について、しっかり理解させるよう務める。 

・メディアリテラシー教育は、私たちが何を教えるかという問題と同様にどのように教えるかということについての重要性も認識する。

・民主主義を進めるためには、私たちのクラスで民主主義の原理を具体化することが重要である。

・教室は、問題に対する生徒の考えが尊重され、価値あるものとされ、そして行動に移す場でなければならない。

・メディアリテラシー教育は、生徒に対して、自分たちのメディアの利用に対して生徒が責任を負うためのスキルを身につけさせる。

・メディアリテラシー教育は、生徒に力を与えられた気持ちにさせる。シニカルな気持ちにさせるのではない。

したがって、 

・メディアリテラシー教育は、党派的ではない。 

・メディアリテラシー教育は、メディア・バッシングをすることではない。すなわち、ある種のメディアや全体としてのメディア産業に対する単純化や誇張、あるいは極端な一般化による攻撃ではない。

・メディアリテラシー教育は、政府によるメディア規制の代替ではない。 

・メディアリテラシー教育は、メディアが公共の福祉をもたらす責任を持つべきことの代替ではない。

・メディアリテラシー教育は、検閲を求めない。 

5. メディアリテラシー教育は、メディアが文化の一部であり、社会化の主体として機能することを認識する。 

したがって、 

・メディアリテラシー教育は、多様な意見や見解、コミュニティを表現しているメディア・テキストを統合する。 

・メディアリテラシー教育は、オルタナティブ・メディアや国際的な展開を試みる機会を持っている。

・メディアリテラシー教育は、暴力やジェンダー、セクシュアリティ、人種など、ステレオタイプな問題や他の表現の問題を取り扱う。

・メディアリテラシー教育は、メディアの所有者、プロデューサーや他のメディア創作コミュニティのメンバーとともに、個人や社会に対するメディアのインパクトについての相互理解を促進する責任を共有する。

したがって、 

・メディアリテラシー教育は、メディアが重要でないという前提には立たない。 

・メディアリテラシー教育は、メディアは問題であるという前提には立たない。 

・メディアリテラシー教育は、公共の福祉をもたらすコミュニティのメンバーとしての責任から、メディアの制作者たちが積極的な貢献や有害にならないように努力することから逃げることを許さない。

6. メディアリテラシー教育は、人々がメディア・メッセージから自分自身の意味を作り出すために、自分たちのスキルや心情、経験を利用すると確信する。

したがって、 

・メディアリテラシー教育は、生徒が自分たちが作っているメディア・メッセージに気づき、考え、自分たちが作っている意味が自分たちの価値観とどのように関係するのか考えることを支援する。

・メディアリテラシー教育は、生徒が自分たちの見方を表現し、明瞭にすることを支援する。

・メディアリテラシー教育は、生徒がメディアを解釈するのに役立つように、生徒にテキストやコンテンツを探索する機会を与える。

・メディアリテラシー教育は、生徒のメディア・テキスト解釈が間違いがないという条件の下で、教職員の解釈と異なっていることを認識する。

・メディアリテラシー教育は、グループ討論やメディア・メッセージの分析を活用して、生徒が多様な見方や見解を理解するように援助する。

・メディアリテラシー教育は、多様な年齢層の個人による、多様なメディア経験を認識し、歓迎する。 

・メディアリテラシー教育は、嗜好や選択と好みを吟味することを通して、理解力や批評力の発達をもたらす。

したがって、 

・メディアリテラシー教育は、生徒が何を考えるべきかということを教えることではない。それは、十分に情報を調査し、自分自身の価値観ともっともよく合う選択に達することができる方法を教えることである。

・メディアリテラシー教育は、「真の」や「正しい」、あるいは「隠された」メディア・メッセージの意味を生徒に明らかにすることではない。分析は正しい解釈よりもむしろ、豊かな探究である。

・メディアリテラシー教育は、どのメディア・メッセージが「よい」か、あるいはどちらのメッセージが「悪い」かを確かめることではない。 

・メディアリテラシー教育は、生徒に自分の判断を「専門家」の意見に置き換えることを求めるものではない。

承認 

もし、あなたやあなたの所属する組織がこの文書の公式な賛同者として名前を掲載してもよければ、「MediaLitEd AT earthlink.net」あてにメールをしてください。そしてタイトルに「MLE Core Principles endorsement」と明記してください。 

AMLAのメディアリテラシー教育の中核原理は以下の人々によって作られた。リンダ・バーグズマ(アリゾナ大学)、デイビッド・コンシダイン(アパラチア州立大学)、シェリ・・カルバー(テンプル大学)、 ルネ・ホッブス(テンプル大学)、エイミー・イェンセン(ブリガム・ヤング大学)、フェイス・ロゴウ(インサイターズ教育コンサルティング)、エレナ・ヨーナ・ローゼン(ジャスト・シンク基金)、シンディ・シャイベ(イサカ・カレッジ)、シャロン・セラーズ-クラーク(ウェイン州立大学)、エリザベス・トーマン(メディア・リテラシー・センター) 

2007年4月、AMLA委員会で承認 

www.AMLAinfo.org

※以下のサイトより転載
http://blog.livedoor.jp/sjun/archives/50390759.html

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