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2018/09/30

「ポスト・トゥルース」時代のメディア教育

Tweet ThisSend to Facebook | by sakamoto
2018年10月6日開催バッキンガム講演会資料の一つです。
PDF版は下のリンクをクリックしてください。
バッキンガム・ポストトゥルース.pdf

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「ポスト・トゥルース」時代のメディア教育
フェイクニュース、メディア・バイアス、メディア・リテラシー教育の挑戦

デイビッド・バッキンガム
イギリス・ラフバラ大学名誉教授
キングス・カレッジ・ロンドン客員教授

注意:これは学術論文というよりは、私の二つのブログ投稿をもとにした原稿である。より詳しい参照とリンクについてはブログを見ると良いだろう。(http://www.davidbuckingham.net/)

トランプ選挙の結果として、いわゆる「フェイクニュース」と呼ばれる問題に対する数多くの議論が起こっている。トランプに反対する人々は、支持を得るためにでっち上げたニュースを流布する彼の支援者(ロシア政府を含む)を批判してきた。しかし、トランプが主張することは自身について間違った情報であるという見解をおとしめるために、トランプ自身はしばしばこの用語を用いてきた。イギリスではさほど問題は明白ではないものの、ブレクジット(英国のEU離脱)キャンペーンや労働党党首のジェレミー・コービンを追い落とそうとする試みがメディア・バイアスや誤リプリゼンテーションに関わる同様の問題を生じさせた。昨年、この問題に関するイギリス議会の公的な調査が告知されている。

フェイクニュースの危険性はまさに自明である。民主主義的な政治プロセスは信頼できる情報に依拠している。もし、情報がもはや信頼できないのなら、市民は政治的決定を行うための土台をほとんど持たないことになる。バラク・オバマがフェイクニュースを「民主主義への脅威」とまで表現したのはこのような理由による。大西洋の両岸で、教室でフェイクニュースについて子どもたちに教えることが求められてきた。もっとメディア・リテラシーを持った視聴者が増えればいくらかフェイクニュースに対して防御できるだろうという期待があった。

この論文で、私はこの状況に対応する上で直面するであろう困難についていくつか考えたい。私は、フェイクニュースは孤立した現象ではなく、より広い社会的、経済的、文化的な文脈で理解される必要があることを論じたい。また、私はこの領域での教育の実践的可能性と困難性についてもいくらか検討したい。私は、メディア・リテラシーを支持する観点から論じる一方で、フェイクニュースは簡単には解決できそうもない問題でもあることを提起したい。

フェイクニュースとは何か?

もっとも簡単に言えば、フェイクニュースとはでっちあげ、意図的にミスリードやだますことを目的としたニュースである。そのようなものとして、フェイクニュースと(アメリカの「オニオン」ニュースサイトのような)風刺的パロディ・ニュースを区別することが重要である。もっとも読者は誰もがこの違いを理解するわけではないだろう。典型的なフェイクニュースは本物のニュースサイトのふりをしてサイトに現れる。しかしフェイクニュースはしばしば大手メディアによって取り上げられ、再度流布される。

フェイクニュースはしばしば政治的な要素を持っている。つまり、それはある種の政治的影響をもたらすように計画された誤情報やプロパガンダとして意図される。それは国家間の「サイバー戦争状況」をもたらすことさえあるかもしれない。(もう一度繰り返すが、冷戦の歴史を見ればわかるようにこのような活動は決して新しいものではない。)

しかし、中には主に経済的な動機を持っているものも存在する可能性がある。フェイクニュースはしばしば「クリックベイト」として機能する。それは広告やユーザーデータの販売を通して収益を生み出す。ネットワーキング・サービス、とりわけFacebookは多くのこの種の仕事をあなたに対して行っている。つまり、彼らのビデネスモデル全体がこの機能に依拠しているのである。このようなものとして、フェイクニュース現象はインターネットの広大な政治的経済と関連させて理解される必要がある。

こうした政治的経済的な動機はまた、ぼやかされるかもしれない。ロシア政府は巻き込まれたのかもしれないが、2016年の大統領選期間に作り出されたトランプ支持のフェイクニュースの多くは明らかにマケドニアのベレスという町の十代の若者たちによって立ち上げられたサイトからやってきた。こうして起業した若者たちは、単にトランプの支持者たちに知りたいと思うものを提供することで、簡単に収益を得ていたと述べている。

今では数多くのフェイクニュースの事例がある。それらは間違いなく見いだしたり、真実からフェイクを区別することが困難になっている。もちろん、多くのものがあからさまかつ明白に馬鹿げたものである。私のお気に入りの事例は、投票の結果、北朝鮮のリーダー金正恩がこの世でもっともセクシーな男性だというものだ。このニュースは2012年にアメリカの風刺ニュースサイト『The Onion』に掲載されたが、正規のニュースサイト『China People’s Daily』にとりあげられた。ウェブサイト上に55ページにわたる写真が特集されたのである。しかし、こうした風刺のばかばかしさには限界がある。2016年の大統領選で流布した、いわゆる「ピザゲート」ニュースは、ヒラリー・クリントンがワシントンのレストランで行われている小児セックス密売組織に関わっているという馬鹿げたものであった。しかし、一人の白人至上主義者がピザパーラーに現れ、自動小銃の引き金を引いたとき、笑いは不快に変わったのである。

フェイクニュースがトランプ候補の運動の支援活動の中で広範に使われたことはほとんど疑いがないが、一方では政治的右翼によって突き動かされ、さまざまな政治的主張を超えてこの犯罪的行為は実行された。「Return of Kings」は極右サイトの一つに過ぎないが、「フェイクニュース」をリベラル・メディアが偽って流布したものとみなしている。米情報機関はトランプによるロシアのホテルの部屋での行為に関するフェイクニュースを流布しているとトランプは主張しているが、これもまた一つの事例である。これはすでに起こっていることかもしれないが、近い将来、私たちはフェイクニュースについてのフェイクニュースを目にするに違いない。

ある意味で、フェイクニュースに関する議論はインターネット誇大広告バブルにおける進行しつつあるデフレーションとみなすことができるかもしれない。ここでいうインターネット誇大広告とは、とりわけ、ネットワーク技術が市民参加と民主主義的関与の導くだろうという考えである。

私たちの中には最初からこうした主張に対して懐疑的だったものがいる一方で、ティム・ウや雑誌『WIRED』のような初期のテクノロジー信者などは、そこにたどり着くのにもう少し時間がかかった。こうしたテクノロジーは進歩的な政治活動家たちにとって優れた原動力になるかもしれないが、私たちの研究によると、それはまた復古極右や街宣レイシズムなどの他の形態の人権侵害者を含む反民主主義的な力にとっても価値のあるツールである。いわゆる「オルト・ライト」もまた情報を作り、サーチエンジンに手を加え、荒らし行為やタグ付け、バイラル(口コミ)活動を行うことができる。実際、明らかになった証拠によると、彼らは左翼よりもこうしたことについてよりうまくやっているという。

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